瑕疵担保責任では、隠れた瑕疵が発見されたときには、知ったときから1年以内に権利を行使する必要があり、「損害賠償責任」もしくは「契約の解除」を求めることができました。
しかし、瑕疵担保責任を問うためには、「隠れた瑕疵」だったことを証明する必要があります。その欠陥の存在を知らなかったと証明することは難しく、瑕疵担保責任は、実際には運用しづらいことが問題とされていたのです。
契約不適合とは、「引き渡された目的物が、種類、品質、または数量に関して契約の内容に適合しない」ことを意味します。
契約不適合責任では、客観的に瑕疵といえるかどうかや、その瑕疵が隠れていたかのかどうかは関係なく、「契約内容に合ったものかどうか」がポイントです。
たとえば入居してから雨漏りに気づいた場合には、それが「隠れた瑕疵」であったことではなく、「契約内容とは違っていた」ことが問題になります。
また、瑕疵担保責任では、知ったときから1年以内に損害賠償請求や契約解除をする必要がありましたが、契約不適合責任では、契約の不適合を知ってから1年以内に売主へ通知すれば、権利が守られると改正されました。
これらの点から、瑕疵担保責任よりも契約不適合責任のほうが、買主の権利がより手厚く守られるようになったといえるでしょう。
追完請求とは、あらためて「契約通りの完全な目的物」の引き渡しを求められる権利です。(民法第562条)
不動産においては、購入後契約書に記載のなかった問題が発覚した場合には、修繕を求めることが可能です。追完請求は、売主の帰責事由は不要です。
たとえば、入居後、雨漏りに気づいたときには、売主に雨漏り修理を要求できます。当たり前のように思いますが、瑕疵担保責任では、まず雨漏りがあることを本当に知らなかったことを証明する必要があり、それは簡単なことではありませんでした。
しかし契約不適合責任では、「雨漏りがある」と契約書に記載していなければ、雨漏りのない家を購入したことになります。購入後に雨漏りが発覚した場合には、たとえ雨漏りしていることを売主が知らなかったとしても、修理を求めることができるのです。
代金減額請求は、買主が売主に対して追完請求をしたにもかかわらず、十分な対応をしてもらえない、あるいは補修できないような問題であるときに減額を求められる権利です。(民法第563条)追完請求と同様に、売主の帰責事由は不要です。
代金減額請求をするためには、買主はまずは売主に対して追完請求をする必要があります。雨漏りがするからといって、いきなり代金の減額を求めることはできません。
ただし、どう考えても補修できないと認められるものについては、修理を依頼することなく、代金の減額請求ができるとされています。代金減額請求は、直せるものは催告(相手に一定の行為を行うように要求すること)が必要ですが、直せないものは催告不要なのです。
契約不適合責任では、売主が追完請求に応じない場合には、買主が催告して解除できる権利、つまり契約を解除する権利があります。(民法第541条)
購入した不動産に契約書には記載のない問題があるにもかかわらず、売主が修理を行わないときには、「修理をしないなら契約を解除します」と言えるのです。契約を解除されると、売主は受け取った代金を買主に返さなければなりません。
催告解除も、売主に帰責事由がなくても行使できます。ただし、契約に適合していない部分が、社会通念上軽微なものと判断された場合には、契約解除はできません。
信頼利益は、契約を結ぶためにかかったような費用を指し、履行利益は不動産投資をすることで期待していた売却益のような費用が該当します。売主にとっては、損害賠償の対象となる範囲は格段に広くなったといえるでしょう。
また、瑕疵担保責任では、瑕疵を知ったときから1年以内に損害賠償を「請求」する必要がありましたが、契約不適合責任では「通知」すればいいとされています。瑕疵担保責任では、不動産売買は「法定責任」とされ、「売買の対象となった物件」を引き渡すことが売主の責任で、「瑕疵のない物件」を引き渡す義務は負わないとされていました。しかしそれでは瑕疵があった場合、買主が不利益を被ります。そのため瑕疵担保責任で、買主を守っていました。
対して契約不適合責任の法定責任は、債務不履行責任であるとされています。(民法562条)これにより、売主の責任は、「契約内容に合致した物件」を引き渡すことと改められました。
瑕疵担保責任では、売主は故意でも過失でもなかった(無過失であった)としても、損害賠償に応じる必要がありました。契約不適合責任においては、損害賠償に応じるのは、故意・もしくは過失があった場合のみです。
損害の範囲は、瑕疵担保責任では信頼利益のみですが、契約不適合責任では履行利益も追加されます。
旧民法においては、売主と買主の合意のもと、瑕疵担保責任の一部、もしくは全部を免責することができました。契約不適合責任においても、同様に一部や全部を免責することは可能です。
瑕疵担保責任においては、築年数が古い家を売却するときには、売主の瑕疵担保責任を免責とする特約が結ばれることが多くありましたが、契約不適合責任でも、同様の特約を締結することが可能です。