知らない不動産屋さんの方が多いんですけど、手付金の成立は「手付契約」によります。手付契約書が別にあるわけではない…そこがわかりづらい理由だと思います。
手付契約は売買契約に付帯する契約ですが、別個独立した1つの契約であり、手付金が現実に授受されることによって成立する要物契約(ようぶつけいやく)です。
つまり、売買契約時に手付金の授受が行われていなければ、手付契約は成立していないことになります。
「売買契約の成立」に関しては、裁判で争われることが多いのですが、私たちが実務をする上では次の2つが重要だと考えています。
◆ 売買契約書へ売主様・買主様が署名・捺印をする。
◆手付金の授受がある。
手付金授受がないと、買主さまが手付解除する権利がなくなりますから、不動産屋さんが仲介をして売買契約をサポートするのであれば、手付金の授受も売買契約の有効性を判断するために重要な要件になると言えます。
少しわかりづらいかもしれないですね。簡単に言いますと…手付金の授受は売買契約を有効に成立させるためには重要なんですよ!ということです。
原則は、売買契約の場に現金を持参して頂くことになります。理由は2つ。
理由その1
売買契約書への署名・捺印が終わってからすぐに振り込みをしたとしても、その日のうちに着金確認が取れるかわかりません。先ほども書きましたけど、売買契約を有効に成立させるためには、売買契約と同時に手付契約も締結するべきです。
理由その2
「現金持参が怖いから事前に振り込みたい」という要望も多いです。確かに、ATMでは1日50万円の出金制限がかかっていることがありますから、窓口に行って数百万円を出金するのは大変ですし、持参する時に盗難リスクもあります。しかし、売買契約が成立する前に数百万円を振り込むリスクもかなり大きいと思います。なぜなら、売主様の本人確認が取れていない状況ですから、偽物の売主様に現金を渡して持ち逃げされるかもしれないからです。
手付金は大きなお金になりますから、もちろん、売買代金の一部に充当されます。ちょっと細かい解説をしますと…
手付金は残代金決済時(=引渡時)に返却されるのが原則です。しかし、大きなお金をいったん返却してもらうのはお手間ですから、売主様・買主様が合意して、売買代金の一部に充当するものとしています。
手付金の法的性格というのは「手付金の法的な意味づけ」です。
手付金の法的性格は次の3つに分けられます。
◆ 証約手付
◆ 違約手付
◆ 解約手付
該当するのは「解約手付」ですから、これだけ解説しておきます。
解約手付とは… 手付金額だけの損失を覚悟すれば、一方的な事情で売買契約を解除できるというものです。売主様が「やっぱ売りたくないんだよね…」とか、買主様が「もっと良い物件が見つかったからキャンセルしてそっちを買います!」というのが認められるわけですね。
民法では、契約当事者の意思で法的性格は決定され、明確な取り決めがない時は解約手付と「推定する」と定めています。宅建業法では、不動産会社が売主になる場合は、消費者保護のために解約手付になると定めています。
大きな協会に加入している不動産屋さんであれば、売買契約書に「手付金が解約手付である」と記載されていますから、「推定」する必要がありません。